子供にはあたりまえ

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 猿面の持ったホウズキが川底を照らすと、ぼぅ……とケイタの母の姿が見えてくる。猿面が言う。 「こことも違う川底の世界は、人の世とも違う狭間の世界。望むものを何でも得られるが、甘い言葉で欺きあう世界よ。君の母親が身を置きたいと願うのは綿菓子のように甘い。周囲の人間が望む言葉をくれ、何をしても褒めてくれる」  じっと猿面が川底の世界を見つめる。 「君の母親はこれから、川底の世界が人の世に戻ってもつづく。本人にとっては幸せな偽りの世界が待っている」  ケイタも川底を息を詰め、そこに流れる場面を見ていた。 「いつ気づくかな」  猿面はため息をつくように独り言を呟いた。  川底を流れる場面が、ケイタが住んでいる家の玄関前を映した。でも、違和感があった。  そこに浮かび上がったのは、母と、身なりの上品な老夫婦だった。  夫人のほうが母にお礼を言っている。テッポウユリから音声が聞こえる。  母が笑顔で老夫婦に告げた。 「私の言う通りにしていれば間違いありませんよ。何しろ『神様からのメッセージ』ですから。大難を小難に、小難を無難にするためのお力ですので」  ケイタが耳を疑う。 『神様からのメッセージ』
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