子供にはあたりまえ

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 母が何万回も口にした言葉だ。  これが、母の望み。  母自身が直接、『神様からのメッセージ』を受け取りたかったのか?  夫人が再度、頭を下げる。 「清香さんの言うとおりにして良かったわ。これは気持ちだけど」  夫人が、母の手に分厚い封筒を渡し、つづける。 「清香さんは選ばれた人なのね、本物に出会えてうれしいわ。私のお友達も今、少し困っている人がいるから、清香さんを紹介させてもらっても、いいかしら?」  母は穏やかに微笑みを浮かべて頷いた。 「是非、そのお友達の方にお会いできるのを楽しみにしております」  夫人が、まるで尊いものを見るような目で母の手を取って、かたく握った。 「本当にありがとう。また何かあったら相談に乗ってちょうだいね」  仲睦まじく、老夫婦が去っていく。  母も満足げに、老夫婦の姿が見えなくなるまで、見送っていた。  母が自宅に入るときに映し出された玄関の表札が『日野原』になっていた。自宅の外壁はケイタが馴染んでいた淡いクリーム色ではなく、真っ白に塗り替えられていた。    そのあと何十組もケイタの家の、母のもとへ客が訪れた。ケイタの家が綺麗にリフォームされていく。
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