子供にはあたりまえ

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 猿面も、うんざりした声で「役満だな、こりゃ」とため息をついた。  川底の景色に、ケイタにも見覚えのある女性が現れた。  真田の肩越しに、清香と女性がテーブルを挟んで座っている。  清香が 「私へのご相談は二回目ですね、えっと……三浦陽奈さん」  造花のような顔に唇の端を少し上げて 「本日はどのようなご用件でしょう?」  微笑みを作る。  三浦と聞いて、ケイタは思い出した。川底を食い入るように見つめる。  こういう見えない世界の効果が不確かなものに、いくらでもお金をつぎ込んでしまう依存症のような人を、ケイタは知っている。  清香が主催していたあの神社ツアーで、家族が怒鳴りこんできた女性。  清香から離れていったあの人はどうしているだろうか、とケイタの中に、ずっと残っている罪悪感。 「二回目……?」  三浦が苦々しく低い声で唸る。 「私は何度もあなたに会っていますよ、思い出せませんか?」  三浦の言葉に曖昧な笑みを浮かべた清香の表情に、忘れたんだな、とケイタは悟る。  地を這うような怨嗟を三浦が吐く。
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