子供にはあたりまえ

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「私が失ってばかりなのに、あなただけが、のうのうとしているのが赦せない。私にはもう何もない」  それでもなお清香は思い出さない様子で「何を?」と聞き返す。続けて清香は 「何を失ったって? 言いがかりよ。三浦さんが失ったのは三浦さんのせいじゃない。三浦さんが私の言う通りにしなかったから失ったんでしょ! 私のせいじゃない。『私のメッセージ』は絶対なのよ!」  清香の放った言葉がざわざわと反響して、ケイタが見ていた川面が激しい波紋になって景色が揺らぐ。 『私のメッセージ』  清香は確かに、そう言った。 三浦の激昂する声だけがこちらにも伝わってくる。 「うまくいばあなたの手柄、失敗すれば相手のせい? ずいぶん都合がいいんですね、メッセーを言うだけ言って、あなたはご自分の言葉に責任を負わないなんて!」  水面はめちゃくちゃに波紋を広げて、もう川底の景色など映さない。  三浦の声が叫ぶ。 「あなたに下る神罰がいつかなんて待ってられない! 今だって遅いくらいよ!」  まだ音声を伝えようとするテッポウユリを、猿面が川の中に沈めた。
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