子供にはあたりまえ

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「神から、ではなく『私』と言っていたな。自分を絶対視し始めていた。このへんが潮時だろう。子供に見せられるのはここまで」  猿面が考え込むようにケイタから目を離し、またヒタと目線を向けてくる。 「ここで見たことはそのまま日野原清香の未来の姿だ。どうするかは君の決断、情に流されるな。慎重に行動するんだ。いいな?」  静かに猿面がケイタに念を押す。 「誰かの養分になんて、されるなよ、ケイタ」  猿面が始めてケイタを名前で呼んだ。  驚いて猿面を見つめて、ケイタはしっかりと頷いた。  穏やかになった川面に手を入れて、猿面がテッポウユリを引き上げ、空を見上げると意識を集中させ何かを聞いているかのようだった。猿面が手にしたテッポウユリから水滴が滴る。 『ケ……タ、ケイタ……ケイタ! 聞こえているか?』  ケイタの頭の中に思念が入ってくる。  ここに来る前に境内で聞こえた、思念を送ってくるのは、あいつしかいない。 『聞こえている!』  ケイタは頭の中で、そう返すと、またすぐに返事がきた。 『どこにいる? こっちはケイタを探して森の周りをグルグル巡らされてる。もしかしてこの森の中にいるのか?』
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