子供にはあたりまえ

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『お人好しすぎる、早く戻れ。ここにいたら大変なことになる』  そう答えたケイタをじっと見つめていた猿面が 「どちらにしろ、あの二人の子供からも半分はもらううんだ。こちらの世界に入ってくるときに、我が主様が、そう決めていた。戻るのに早いも遅いも関係ない」  と口を挟んだ。  再度、あいつが思念を送ってくる。 『誰かそばにいるのか?』  猿面が思念ではなく声で言う。 「我はヤオゴコロオモイノカネ様が神使、壬申だ」  猿面に名があるとは思いもしなかったケイタは、名乗られていなかったことに、軽くショックを受けた。  こういうのはまず、初めに言うことではないのか。  そこでケイタは、はっとした。  思念を送ってくるあいつと、もう一人の名前を、ケイタはまだ知らない。 『今さらなんだけど、おまえらの名前、教えてくれないか』  ケイタはバツが悪くなる。 『ぼくは颯太、それから大地』  思念で自己紹介した颯太が、ケイタのバツの悪さが伝染したように歯切れ悪く 『境内で、ケイタを責めてしまって、ごめん』 『こっちこそ、颯太と大地は悪くない.酷い八つ当たりして、ごめん』  ケイタも謝った。
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