子供にはあたりまえ

61/85
前へ
/85ページ
次へ
 ぼんやりと大地の顔から目線をはずし颯太は宙を見上げていると、近くの木々が割れて、そこからケイタが、片手に光るホウズキの実がみのった枝を持って現れた。  大地が気づいて、ケイタに駆け寄ると、ケイタの背中をバンバン叩く。 「あー! ようやく会えた! 何してんだよ、ここに来たときに追いかけたのに、いなくなったから心配したよ」 「大丈夫。ここから脱出するよ」  ケイタが颯太を見て首をかしげる。 「座り込んでる場合じゃないけど、颯太、どうしたんだ?」  大地に訊ねる。 「さっきのグワーッっていう重力が強くなるやつが消え去ったら、ケイタがこうなった」  ケイタが少し考え込むようにして 「あー……ぼくもさっきのは緊張感がすっごくて、地面に倒れたよ。大地は平気だったの?」 「オレは……怒りのほうが勝ってて、そんなのすぐに吹き飛んだ」 「大地ってそんな感じなんだ」  大地とケイタが笑いあう。  ケイタが気を引き締め一転、息を吐く。 「ここから先はぼくが先に行く。二人は何があっても振り返るな」  颯太と大地に注意すると 「歩けるか、颯太」  ケイタが気にかけた。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加