子供にはあたりまえ

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「……予定通りだと、ミドリさんの希望で、このあとは市内で観光して一泊。明日、三峯神社に参拝に行く。三峯神社の宿坊で一泊して、明後日、帰る。ミドリさんが車を出してくれてるから」  ケイタが左耳をそっと押さえて言った。 「なんだか耳の奥で自分の声が聞き取りにくいから、変な感じだ」  ケイタの表情が曇る。 「いまは耳が変で苛々する。さっき二人に飲んでもらったホウズキは、失った半分を別の形で補う力を与えてくれるらしいから、大地の、五秒後の景色は、その力だと思う。颯太の眼が灰色になったあと、どう補う力が現れるのかは、まだ……」  颯太は、ケイタが責任を感じているのだと、気づいて 「ケイタを補う力も現れるんだろう?」  方向を変えるように言う。 「どうなるのかは、なってから話そうよ」  大丈夫、と颯太は、言い聞かせるつもりで力強く言った。 「そのためにいつでも連絡できるようにしたんだから」  部屋の柱時計が、午後二時を知らせる音がした。  現実の世界では、颯太の自宅を出てから、まだ一時間しか経過していないが、感覚的には三日間くらい経ったように思えてならなかった。
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