子供にはあたりまえ

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 明日、父がここまで迎えに来たら、ちゃんと清香と決別しよう。  清香のコントロール下にあったときには気づけなかった歪んだ依存関係を、ケイタはいま、断ち切るために動き始めた。  まだ日が暮れないうちに境内を散策しようと思い、ケイタは遥拝殿まで足を延ばして、のんびり周回して拝殿まで戻ってくると、奥宮まで登っていたミドリとナツノに、声をかけられた。 「あれ? ケイタくん。清香さんは?」  ミドリが尋ねる。ケイタは口元だけ上げて笑顔を作った。 「部屋で横になっていると思います。しばらく一人にしてあげたほうがいいかな、って」 「そうなの? じゃあ、私たちもあまり部屋にいないほうがいいかな。山登りして汗だくだから、お風呂を先にいただくわ。夕食までは……あと、一時間くらいね。午後六時からだから」  ミドリが携帯で時刻を確かめる。 「ケイタくんも大浴場でゆっくりしたほうがいいんじゃない?」 三人で一度、部屋に行き、着換えとお風呂セットを持って大浴場に行く。ミドリの言葉に従ったのは、清香と部屋に二人で気詰まりになりたくなかったからだ。
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