子供にはあたりまえ

84/85
前へ
/85ページ
次へ
清香が布団に横たわったまま、何事かをブツブツと小声で独り言をつぶやいている。 その異様さにミドリとナツノが、清香をいないものとして、視界にも入れずに、今日の奥宮に登ったときの「導かれた話」をしている。 ケイタが何かメッセージを伝えなくても、主催の清香が加わらなくても、彼女たちは平常運行で、いかに自分たちが神様に歓迎されているかを夢中で話している。 「なんだ、そうか。関係ないんだ」  ケイタは思わず口から言葉が出てしまった。  それが思った以上に声量が大きかったらしく、彼女たちがケイタに注目して会話を止める。部屋に清香の独り言だけが続く。 「どうしたの、ケイタくん。また神様のメッセージが聞こえてきたの?」  ミドリが存在を思い出したように質問してくる。  そうか、こいつら、神様なんて本当はどうでもいいんだ。いかに自分たちが特別かを誇示したいだけなんだ。そのツールとして誰かがいれば、それが誰でも関係なかったんだ。  腑に落ちて、今度は腹の底から可笑しさがこみ上げてきて、ケイタは笑いを堪える。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加