子供にはあたりまえ

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 大人が子供の言うことをパーフェクトに聞いて、思い通りに動いている環境で育ったとしたら、そいつは一人で生きていけない人間になってしまうのではないか。  颯太は一人っ子だが、別段、甘やかされてはいないと思う。  母が洗い物を終えて居間に来た。 「自由研究はどうなっているの?」 「まだよくわからないんだよね。スケール通りにできてない部分があるし」  そう颯太が言うと母は 「颯太がお風呂に入っているうちに、同じ町内だし宮司の今薗さんに連絡しておいてあげる」 「ありがとう。お風呂に入ってくるよ」  人によっては颯太の家が生ぬるく感じるだろう、と颯太は思った。  昨夜、風呂あがりに母から 「明日、今薗さんの息子さんが授与所いるみたいだから、神社に行く前に電話してから訪ねなさいね」  とメモを渡されたので、大地が家に来ると、さっそく電話して秩父神社の授与所を訪ねた。  授与所から出てきたのは、浅葱の袴をはいた身長はそれほど高くない、一六〇センチの颯太が少し見上げたくらいで視線を合わせられる小柄な体形で、ぱっちりした目が印象的な、若そうに見えるけれど年齢が予想できない人だった。 「浅賀颯太です」
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