2.君の笑顔

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パチッと目の開いた亮平と近距離で視線が交わり、陽茉莉は「わああっ」と飛びのいた。 「あ、ごめん。驚かせた?」 「いえ、こちらこそすみません。変な悲鳴をあげちゃって」 伸ばしかけていた手を慌てて引っ込め胸元で握る。 「起こしちゃいましたか?」 「いや、寝てないよ。ストレッチをしてただけ。ずっと車椅子だとどうしても体が固まるからね。それに陽茉莉とのデート中に寝るわけないだろう?」 亮平はおかしそうに笑う。 陽茉莉は急にバックンバックン鼓動が速くなった。 (陽茉莉とのデート中だって!) こんなワードひとつで先ほどまで沈んでいた気持ちが復活するのだから、自分はなんて安上がりな女だろうと思う。 「どうかした?」 「あっ、そうだ。お茶を買ったら当たりが出てもう一本もらえました」 じゃじゃーんと効果音をつけて亮平に差し出せば亮平もとても喜んでくれ、陽茉莉の顔には笑顔が戻った。 「……よかった、笑ってくれた」 「え?」 「なんかさっき機嫌が悪そうだったから、俺が何かしちゃったかなと思って」 「いえいえ、そんなことは……あ、えっと、……ごめんなさい」 陽茉莉はつと視線を逸らす。子供じみた嫉妬でまさかそれが表情に出ていたとは反省だ。しかもそれで亮平の気分を害していたのならなおさらのこと。 「ごめんね、陽茉莉。俺に障害があるから不自由させてしまって」 「ち、違うんです。亮平さんのせいじゃなくて。えっと、その……」 どうしてか、目が泳いでしまう。亮平のせいじゃないのに亮平は謝ってくれて、それがとても申し訳なさ過ぎて……。 陽茉莉はぎゅっと目をつぶると一息に懺悔した。 「亮平さんが綺麗な女性と喋ってるのを見て、し、嫉妬したというか……ごめんなさい、ただのヤキモチです」 亮平は体をぐっと起こすと、畳にひれ伏さんばかりの陽茉莉の肩に触れた。 目の前の陽茉莉はこんなにも必死なのに、なぜだろうか、亮平はそれがとても嬉しいと感じてしまう。
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