2.君の笑顔

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「陽茉莉、顔を上げて」 言われてつと顔を上げれば、とんでもなく優しい表情を浮かべた亮平と目が合った。 (――ああ、好きだな) 気持ちが抑えられなくなりそうで口を開きかけたけれど、「おでこが赤いけどどうしたの?」とすっと前髪をかき分けられてまたしてもドキッとする。 「えっ? ああ、これはさっき自販機にぶつけちゃって」 「大丈夫?」 「たぶんその衝撃で当たったんだと思います、お茶」 「いや、そんなわけないだろう?」 苦笑いの陽茉莉に亮平はククッと吹き出す。 二人でくすくす笑っているとあっという間に穏やかな空気に変わった。 「お茶、飲みましょうか」 「そうだね」 陽茉莉はぐっとペットボトルのキャップを捻るがなかなか開かず、うぐぐと苦戦する。「貸して」と亮平が代わりに捻れば、簡単に開いてしまった。 「ペットボトルはキャップじゃなくてボトルの方を捻ると開けやすいよ。はい、どうぞ」 「そうなんですね。今度から頑張ります」 「ははっ。頑張らなくてもいいけど。開けられなかったらまた俺が開けてあげるよ」 さらっと言われた嬉しい言葉が陽茉莉の中に蓄積されていく。 亮平は優しい。 亮平といるとあたたかな陽だまりの中にいるよう。 「亮平さん体大丈夫ですか?」 「問題ないよ。ありがとう」 「あの、今日って何時まで大丈夫です?」 「うん? 何時まででも大丈夫だけど」 「夜まで……一緒にいてもいいですか?」 デートとは、何時までのことを指すのだろう。 亮平とはフラワーパークに行こうとしか話していない。ここフラワーパークはかなり大きな敷地で、イベントも行われれば飲食店もある。梅や桜以外にもたくさん見るものがあって……。 時間が経つにつれて離れがたくなる。 もっともっと一緒にいたい。 今日という日が終わらなければいいのに。 「梅の木のライトアップとイルミネーションがあって、少しだけ花火もあがるんですって」 「そうなんだ。だったら夜までここにいようか。まだ見るものもたくさんあるし。向こうには温室もあるってパンフレットに書いてあったね」 「行きましょう、行きましょう! キッチンカーもたくさん来てるみたいだし楽しみっ」 わくわくと心躍っていると「花より団子だね」と亮平はからかう。陽茉莉は満更でもなく、「亮平さんだって美味しいもの食べたいでしょう?」と笑った。 あまりにも純粋な反応に亮平も思わず頷き、笑顔になった。
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