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episode6
「俺だって...過去のことすっきり全部忘れて、夢来のことで頭いっぱいにしたい......。」
『えっ……?もう1回...言って。』
「やだよ...2度は言わない...恥ずかしいだろ。」
あぁ…好き、好きなんだ。
私は星野の真っ直ぐなところも、優しいところも、恥ずかしがるところも…好きなんだ。
『好き…好きだよ…星野…。』
夢来はそっと手を伸ばし、星野の体を自分へと引き寄せて、彼の胸に顔を埋めた。
抑えきれない想いが、感情が、全身から溢れてくる。
「なぁ夢来。すぐに元彼のこと忘れられなくてもいいから…傷ついた心に蓋をして、無理に元気に振舞おうとしなくてもいいからさ……」
──「俺の彼女になってほしい。」
過去は変えられない。
記憶も書き換えられない。
心の傷は中々癒えない。
それでも、少しつづでも、前に進むしかないんだ。だって、私のことをこんなにも大切に思ってくれる人が…ほら、目の前にいる。
お互いまだまだ知らないことばかりだけど、
だからこそ、これからは2人の楽しい思い出をたくさん作っていくんだ。
少しづつ、確実な愛を育んでいきたい。
『はいっ…私でよければ、星野の彼女にしてくださいっ…。』
つーっと、一滴の涙が頬を伝う。
それは悲しみによる涙ではなく、嬉しさからの涙。
星野に出会わなければ、もしかしたら今頃、雨が大嫌いになっていたかもしれない。
毎年梅雨がやってくる度に、あの日のことを思い出して1人で泣くことになっていたかもしれない。
でも今なら……
” 雨よ降れ” って、そう思える。
雨が降れば、星野との出会いを思い返せるから。降り注ぐ雨で辛い過去を洗い流して、星野と過ごす時間をより一層大切にできるから。そして気がつけばほら、雲間から光がさしてる。
ꕤ︎︎ENDꕤ︎︎
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