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「……そちらは、お嬢様ですか?」
吉岡さんが、私に視線を移す。
「ええ、そうです。春花、自己紹介しなさい」
お父さんが、私に優しく声をかけた。声色はとっても優しいけど……その目は笑っていない。何か失礼があってはいけないから、お父さんも緊張してるんだ。
……落ち着いて、答えなきゃ。
私は柔らかく微笑んで、吉岡さんの顔を見つめた。
「北原春花と申します。吉岡様、日ごろより弊社の製品を愛用してくださり、ありがとうございます。パーティー、楽しまれてくださいね」
頑張って作った、愛想笑い。そして、礼儀正しい言葉遣い。
……息苦しいな。
「ありがとうございます。よく出来たお嬢様ですね」
吉岡さんはそう言って笑顔を作るけど……目が、笑っていない。完璧な愛想笑いだ。
パーティーが始まってからお話した、どのお客さんもそうだった。言葉では褒めても……本心では、私の事なんてどうとも思っていない。みんなの関心は、私じゃなくて北原グループにあるのだから。
……私がここにいる意味、あるのかな。
そんなこと、考えちゃいけないって分かってる。パーティーに集中しなきゃいけないのも、分かってる。
でも、こうも無関心な態度をとられると、モヤモヤしちゃうよ。まるで、私が必要とされていないようで……少し悲しい。
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