国王陛下の溺愛

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国王陛下の溺愛

「最近の国王陛下のご威光は、ますます増すばかり。よきかな、よきかな」 「ああ、そうですな。昔は少し謙遜が過ぎるきらいがありましたが、最近は堂々たる風格も身につけられて」 「やはり妃殿下を迎えてから、陛下はお変わりになりましたな。最初は頑なに独身を貫かれておったが、さすがにエルゼ様ほどの才女を前にすれば骨抜きだ」 「違いない。しかし、あの堅物陛下があれほどまでにエルゼ様を寵愛なさるとは、いやはや愛は人を変えますのう……」  ヴォルクレール城の国王の間に通じる廊下で宰相たちが笑いあっているのを、うっかり扉越しに聞いてしまったエルゼとロレシオは、揃って頬を染めた。  この城はいささか古い造りになっており、防音もへったくれもない。それは、エルゼが最近与えられたこの王妃の部屋にも当てはまることだった。――つまり、廊下での話し声は部屋の中まですべて筒抜けなのである。  宰相たちも、まさかエルゼとロレシオが王妃の部屋でアフタヌーンティーを楽しんでいるとは思わなかったのだろう。ふたりは郊外での公務が早めに終わったため、予定より早い時間に城に戻っていたのだ。
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