初夜※

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 エルゼはその手を握る。このたくましい手に掴まっていないと、身体中をさざ波のように襲うかすかな快感の波が、やがてどこか遠く攫って行ってしまう気がして。  やがて、エルゼのまっさらな腹に、ロレシオは熱い精を放つ。  口づけのない男女の交わりは、意外なほどあっさりと終わった。  ロレシオはすぐにエルゼから体を離し、エルゼに背を向けた。エルゼは乱れた髪を整え、用意してあったタオルで自ら身体を清める。  二人は終始無言だった。  月明かりにぼんやりと照らされる部屋の中で、シーツに目を落としたエルゼはハッとした顔をする。 「すみません。……シーツに血がついてしまいました」 「君が謝ることではない。それより、……痛まないか。初めてだったんだろう」 「……ええ、大丈夫ですわ」    エルゼは控えめに答えた。少なくとも、予期していたほどの痛みではない。  それにしても、奇妙な感じすらする。結婚したとはいえ、ロレシオと会ったのは今日で3度目。それまで貞淑な貴族令嬢としてふるまってきた彼女は、会って3度目の男に純潔を捧げたのだ。
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