国王陛下の溺愛

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 足音が遠くなったのを見計らって、ロレシオは小さくため息をつく。 「すまない。その、……うちの宰相たちはああいった話題が好きでな。後日さりげなく注意しておくことにしよう」 「いえ、お気になさらずに。皆さま、陛下のことを褒めていましたもの」 「まあ、そうだな……。エルゼがそう言うなら聞かなかったことにしよう。しかし、私は宰相たちに堅物だと思われていたのか。……少々ショックだな」  眉をハの字にするロレシオに、エルゼは口元に手を当ててクスクスと笑ったあと、ふと気づかわしげな顔をした。 「宰相の方々に声をかけなくてもよかったのですか? 今日の公務のことで、お話することもあったでしょう」 「構わない。彼らとはどうせ明日会うのだから。今は、君とこうして茶を飲む時間のほうが大事だ」 「そう言ってもらえるのは大変幸せなことですけれど、こんなにもわたくしが陛下を一人占めしても、よろしいのでしょうか?」 「どれだけ長く、私が君を想って待っていたと思っている。これだけでは大抵足りるわけがない」  ロレシオは相好を崩すと、隣に座るエルゼの目元に素早く口づけた。驚いたエルゼは小さく悲鳴をあげる。
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