その夜 ※

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 お互いの唾液を交換し合うような、ぐちゅぐちゅとはしたない音が静かに部屋に響いた。翻弄されながらも、エルゼは夢中でロレシオの舌に応える。エルゼの拙い舌がロレシオの舌と触れるたびにロレシオが何かを堪えるような息を漏らした。  永遠のように感じられた長いキスは、ロレシオは身体を離したことにより唐突に終わった。  エルゼの頬にかかった髪を、ロレシオは名残おしそうにはらった。 「私はダメだな。どうしても、年甲斐もなく君を求めすぎてしまう……。君を前にすると、10代の小僧に戻った気になる」 「……どうして謝るんですの? すごく気持ちが良く、してくださっているのに……」  サファイアブルーの瞳をぱちぱちと瞬きさせ、エルゼは不思議そうな顔をした。  そんなエルゼを見て、ロレシオはガシガシと後頭部をかく。 「ああ、君は、まったく……っ。あまりに心根が純真すぎて、本当に二人分の人生を生きたのか、不思議になる……っ」  ロレシオは、エルゼの細い肢体を力強く抱きあげ、自分の腿の上に座らせた。二人の距離が近くなる。それと同時に、熱い大きな手がエルゼの身体の輪郭をなぞった。
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