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……あー、そのあと? そうだね。
彼の心に超大型台風を起こすことはできたんじゃないかな、と思ってる。
彼が今は傘の持ち手でなく、あたしの手を直接握ってくれていることが、その証だと思ってくれていい。あれからすぐに雨も止んだので、傘もお役御免となった。彼の、あたしが握っているのと反対の手で小さくくるくると巻かれている。
まあ、割とすんなりあたしのことを受け入れてくれたっていうのは、なんだろう。彼も心のどこかで、そういう青春っぽいことに憧れていたのかもしれないね。
にしても予報を的中させると気分がいい……と思いつつ、雨の上がった帰り道を歩いていたら、ふいに彼が口を開いた。
「あのさ」
「なに?」
「ぶっちゃけた話、小日向さんが時々僕の方をちらちら見てたこと、気づいてたよ」
「なっ……」
さすがにそれは、あたしの予報にないことだった。
はっとした顔で彼の方を見たら、さっき真っ赤になってたのが嘘みたいに、太陽よりも眩しく笑っている。
もしかすると生徒玄関であたしが声を掛けた段階から、彼は今日これから何がどうなるのか、すべて気づいていたのかもしれない。
そんなこと……と言い返そうとしたのに、彼はまるで勝利宣言でもするかの如く、あたしに向かってはっきりと言った。
「空気なんて読まずに言ったよ。僕の勘というか、予報がそう告げている」
困ったな。
もっかい、雨雲を呼び寄せないといけないじゃん。
かぁっ、と顔が熱くなるのを感じて、あたしは鼻を鳴らしながら、そっぽを向いた。
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