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彼らの上官、片岡次美は「96」創立メンバーのひとりである。
表の顔は警視庁の幹部という底知れぬ切れ者だが、道端で車を待っているだけでお地蔵様と間違えられて、果物を供えられるほど地味……存在感が控え目なため、彼に関する情報や外見を記憶するのは至難の業なのだ。
「オイラ単独班だから配属先は違うけど、イチゴとは同期になるんだってさ。よろしくな!」
と、求められた握手に応じつつ、イチゴは「まだトラフクは『あの事件の真相』を知らないらしい」と判断した。
だって、もしも本当のことを知っていたら、トラフクにとって、ぼくは殺したいくらい憎い相手になるの。
ある凶悪な事件がきっかけで、天才薬師のイチゴと神技的なスリの腕を持つトラフクは「96」の一員としてスカウトされた。
その際、イチゴは片岡から「今回の事件で犠牲となった美鈴ランは、君と同期になるトラフクと姉弟のような親しい間柄にあった。一度、彼に会っておくといい」と地味に説明を受けている。
それ以降、イチゴはトラフクに対して強い罪悪感を抱えており、この先、信頼し合える仲間になれるとは、到底思えなかった。
あの事件にイチゴが関わっていたことをトラフクが知れば「ランを殺した奴と一緒の組織なんて冗談じゃない!」と激昂しても、おかしくないからだ。
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