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そのためイチゴは「この先ずっと、トラフクに会うことがなければいいのに」とさえ思いかけていた。
しかし、親し気に声をかけてくれたトラフクを目の前にして、やはり自分に嘘は吐けないと、ついに覚悟を決めたのである。
「……トラフクに、大切なお話があるの」
真剣な青い瞳がトラフクを映す。
「ど、どうしたのさ?急に……」
「美鈴ランさんの死の真相を、ぼくは知ってるの」
「え、えっ……?」
トラフクの細い目が、驚きに見開かれる。
「彼女の死因は、殺人犯が『15MM(ミリ)』っていう扱いが難しい薬品を、わざと過剰摂取させたせいなの。しかも危険ドラッグと併用させて」
悔しさと恐怖で体が震えそうになるのを堪えながら、イチゴが必死に言葉を絞り出す。
「そして、その『15MM』を作った薬師は……ぼくなの」
しばらく流れた重い沈黙を破ったのは、トラフクであった。
「……どうしてイチゴは、それをオイラに言ったのさ?」
「トラフクは仲間として、ぼくに接してくれようとしたの。でも、ぼくの作った薬品は、トラフクの大切な人の命を奪ってしまったの。そのことを黙ったまま、これから先ずっとキミと仲間のふりなんて出来ないの」
「…………」
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