【00】プロローグ

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 そのためイチゴは「この先ずっと、トラフクに会うことがなければいいのに」とさえ思いかけていた。  しかし、親し気に声をかけてくれたトラフクを目の前にして、やはり自分に嘘は吐けないと、ついに覚悟を決めたのである。 「……トラフクに、大切なお話があるの」  真剣な青い瞳がトラフクを映す。 「ど、どうしたのさ?急に……」 「美鈴(みすず)ランさんの死の真相を、ぼくは知ってるの」 「え、えっ……?」  トラフクの細い目が、驚きに見開かれる。 「彼女の死因は、殺人犯が『15MM(ミリ)』っていう扱いが難しい薬品を、わざと過剰摂取(オーバードーズ)させたせいなの。しかも危険ドラッグと併用させて」  悔しさと恐怖で体が震えそうになるのを(こら)えながら、イチゴが必死に言葉を絞り出す。 「そして、その『15MM』を作った薬師は……ぼくなの」  しばらく流れた重い沈黙を破ったのは、トラフクであった。 「……どうしてイチゴは、それをオイラに言ったのさ?」 「トラフクは仲間として、ぼくに接してくれようとしたの。でも、ぼくの作った薬品は、トラフクの大切な人の命を奪ってしまったの。そのことを黙ったまま、これから先ずっとキミと仲間のふりなんて出来ないの」 「…………」
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