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「イチゴは苦しんでる人たちを助けたい一心で『15MM』って薬を作ってるって、片岡の旦那から教えてもらったけど、それはホント?」
質問したトラフクを真っすぐに見つめながら、迷うことなくイチゴが頷く。
「ナイフだって便利な道具だけど、人に向けたら凶器になる。オイラが絶対に許せないのは『15MM』を悪用してランを殺した連中さ。だからイチゴが気にすることじゃないよ」
「トラフク……」
「ランの死は本当にショックだったけど……頑張って作った薬をそんな使われ方しちまったんなら、イチゴだって辛かったよな」
トラフクは、ランが亡くなった事件の真相を知らなかったのではなく、イチゴを責める気がなかったのだ。
赦されることなど難しいだろうと思っていた相手から、優しい慰めの言葉をかけられ「何を言われても、加害者が被害者の前で泣いちゃダメだ」と耐えていたイチゴの目から、とめどなく涙が溢れ出る。
「ありがとうなの……まさかトラフクが、そんなふうに思ってくれるなんて、まったく想像してなかったの」
濡れた長い睫毛の下で、青い宝石のように輝く瞳に見惚れかけていたトラフクは、ハッと我に返った。
「イ、イチゴ、泣かないでよ!周りからオイラが、いじめてるみたいに思われちゃうよ!」
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