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あたふたとするトラフクに対し、イチゴが小さく左右に首を振って否定する。
「……大丈夫なの……ぼく、トラフクは優しくて素敵な紳士だって、みんなに言っておくの」
「紳士っ?そ、それも勘弁してよ!ちっとも紳士なんて柄じゃないのに、オイラ恥ずかしいよ!」
と、ふっくらした頬を赤らめながら、こういう時にハンカチのひとつでもスッと差し出せるのが、紳士なんだろうなと反省する。
凄腕のスリであるトラフクは、少しでも身軽でいるほうが動きやすいため、普段はハンカチすら持っていないのだ。
「そうだ!イチゴって、おにぎり好き?」
「うん!先日『96』の応援班から病院に、おにぎりの差し入れをもらったの。おいしくて食べやすくて、ぼく大好きになったの」
「それならさ、オイラの家の近くに、おにぎり専門の美味い店があるんだ。今度一緒に行かない?」
「嬉しいの!ぜひ行きたいの!」
と、目を輝かせたイチゴのお腹がクゥと鳴り、ふたりで笑い合ったのだった。
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