【00】プロローグ

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 あたふたとするトラフクに対し、イチゴが小さく左右に首を振って否定する。 「……大丈夫なの……ぼく、トラフクは優しくて素敵な紳士だって、みんなに言っておくの」 「紳士っ?そ、それも勘弁してよ!ちっとも紳士なんて(がら)じゃないのに、オイラ恥ずかしいよ!」  と、ふっくらした頬を赤らめながら、こういう時にハンカチのひとつでもスッと差し出せるのが、紳士なんだろうなと反省する。  凄腕のスリであるトラフクは、少しでも身軽でいるほうが動きやすいため、普段はハンカチすら持っていないのだ。 「そうだ!イチゴって、おにぎり好き?」 「うん!先日『96』の応援班から病院に、おにぎりの差し入れをもらったの。おいしくて食べやすくて、ぼく大好きになったの」 「それならさ、オイラの家の近くに、おにぎり専門の美味(うま)い店があるんだ。今度一緒に行かない?」 「嬉しいの!ぜひ行きたいの!」  と、目を輝かせたイチゴのお腹がクゥと鳴り、ふたりで笑い合ったのだった。
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