現実世界が一番だけど、お兄ちゃんと一緒なら異世界でも最高です!

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 ちなみに頭の出来だけでなく、兄と私はあまり似てない。兄は元の髪色が茶色っぽく二重のぱっちりした瞳で色は白い。身長はすらりと高くいわゆるイケメンである。対して私は髪も瞳も真っ黒で奥二重で浅黒い肌をしている。身長は高めだが似ているのはそれくらいだ。兄は母親に似て、私は父親に似てしまった。  だから、二人で並んで歩いていても兄妹だと言われることがない。 ※※ 「これっていったい……」  私は自分の部屋に突然現れた大きな扉に戸惑っていた。兄が自分の部屋にこもっているので、私も自分の部屋で宿題をすることにしたのに、これでは宿題どころではない。大きな扉は部屋の中央にそびえたち、部屋に似合わない豪華なつくりをしていた。部屋のドアの数倍はある、重厚な木の作りの扉は部屋に入ってすぐ目に入った。不思議な現象が起きているが、もしかしたらこれは。 「異世界につながる扉だったりして」  言葉にしてみると、ばかばかしいがそれ以外に考えられない。兄の部屋に謎の扉が現れたなら、神様とかが異世界好きの兄を招待したのだと納得できる。しかし、私は異世界に否定的な人間だ。そんな人間の前に扉が現れる理由がわからない。 とはいえ、扉を開けてそこから異世界にいけるのだとしたら。 (せっかくだし、扉の先につながっている世界に行くのもアリかも)  あまりに非現実的な出来事が目の前で起こっているせいで、思考がおかしくなっていた。私は恐る恐る扉に手を伸ばしてみることにした。  物語の中では、一度扉を抜けると一生元の世界に戻れないことも多いが、その辺のことは私の頭からすっかり抜け落ちていた。  扉は私が手を触れる前に勝手に開いた。慌てて扉の中を覗いてみるが、真っ暗で何も見ることが出来ない。 (もしかしたら、お兄ちゃんが望むような異世界ではないかもしれない)  扉の向こう側で何が待ち受けているかわからない。異世界なのか、地球上にある場所なのか、天国か地獄なのか。しかし、なんとなく今この扉をくぐらなければいけない気がした。危険を覚悟で私は扉をくぐることに決めた。 (覚悟は決まったけど、足が進まないんだよなあ)  決意したのは良いものの、私はしばらくの間、扉の前でたたずんでいた。 「ゆめかあ。そろそろお風呂に入りなさいねえ」  一階から母親の声が聞こえてくる。慌てて部屋の壁時計を確認すると、確かにそんな時間だ。 (こういうのって、扉の先と今の時間の流れが違っていて、扉の先の世界で過ごした時間と戻ってきたときの時間が違うのがお約束だよね)  小さいころ読んだ物語でそういう展開の話があった。自分が住んでいる場所とは別の場所で過ごした時間と、現実の世界に戻ってきたときで時間のずれがあったのだ。私の場合もそうなるだろうか。
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