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『異世界でいいところは、女性の露出が高いところだよな。現実でそんな恰好で歩いていたら、普通に捕まるレベルだろ。しかも、そいつらを見ているだけで俺たちはセクハラで捕まりそうだ』
兄が家でよくつぶやいていた。異世界というのは女性の露出度が高いらしい。兄を探しながら町を歩きながら、先ほど兄を迎えに来た女性の服装を思い出す。
赤髪の女性は騎士みたいだった。鎧を身に着けてはいたが、胸周りだけぽっかりと空洞になっていた。あれでは胸を剣で刺されたら致命傷を受けてしまう。下半身は膝上までの皮のロングブーツを履いていたが、お尻の付け根当たりまでしかない下着のようなショートパンツを合わせていたので、太ももの絶対領域が丸見えだ。これもまた太ももに剣を突き立てられたら致命傷だ。
(女騎士には見えるけど、あの服は戦には向かないと思う)
もう一人の女性は聖職者のようにも見えた。長いローブを羽織っているのは漫画で聖職者が多い。しかし、聖職者というには余りに幼い容姿だった。銀髪を背中に伸ばした可愛らしい少女だった。しかし、可愛らしいのは容姿だけで服装は決してかわいいものではなかった。ローブの裾から見えるスカートはひざ下まであったが、かなりのスリットが入っていて、お尻が見えるくらいのものだった。どんな下着を身に着けているのか知らないが、あれでは歩くたびに下着が見えそうだ。
『ユメはコスプレでもあんな破廉恥な服は着るなよ』
兄に絶対に着ないのに念押しされていたことを思い出す。コスプレはみるのは楽しいが、自分が着たいとは思わないので、ただ適当に返答した気がする。
そんなことを考えながら歩いていると、町のはずれまで来てしまった。町自体はあまり大きくないようだ。
私が迷っていた森だと思われる場所に到着した。金髪の男と深紅の髪色をした女性、銀髪の女性の姿が確認できた。
※※
「ちょっと、こんなに強いなんて聞いてないんだけど」
「私の魔力はもう、限界です」
彼らのそばに近付いていくと、彼らがかなり焦っていることがわかる。森の方角に目をむけると、そこには巨大なドラゴンがそびえたっていた。物語の中で目にしたことがあるので、その大きさには戸惑ったが、それ以上の感情はわかない。
真っ黒な身体に頭には大きな角が生えている。大きさは一軒家くらいあるだろうか。それに対して、男や女性たちが魔法を放っているようだが、鱗が固いのか、ダメージを与えられていないようだ。ドラゴンはなぜか、こちら側に攻撃することなく、ただ彼らの攻撃を黙って受け続けている。
(ああ、やっぱりここは異世界なんだなあ)
「ユメ、どうしてここに!家で待っていろと言っただろ!」
「だって、お兄ちゃんが心配だったから」
「お、お兄ちゃんって、お前まさか」
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