恩赦の雨

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 私は走っている最中、牧師の顔が浮かんだ。  あの野郎が私を売った。許せない。どうせ、私は殺人を犯した。ついでに牧師を殺そう。  私は教会に向かって走り出した。  三角屋根の十字架が見えてきた。  私は扉を蹴破って、中に入った。中は真っ暗だった。私はそれでも牧師を探した。  すると、どこからか、地面を揺するような轟音が轟いた。振り返ると、開け放した扉の口から泥に塗れた濁流が一気に押し寄せてきた。あっという間もなく、私の身体は濁流に飲み込まれた。  空は今までの大雨が嘘のように晴れ渡っていた。  雲一つない快晴だった。  村で唯一の教会が土砂崩れにあい、建物もろとも流された。  村人たちは土砂を掻きだしていた。  土砂に埋まった教会の屋根が見えてきた。  もう少し、掘り起こしてみると、そこには十字架の先端に胸を貫かれた囚人の姿があった。       <了>
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