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エリー達の生きるこの世界は数年前、一度、終末を迎えたっす。終末といっても全ての生き物が死に絶えました~みたいな物騒なお話ではなく。神々がこの世界に授けてくださった力、いわゆる魔力が完全消滅してしまったっす。
魔力を用いて魔法の技術で生計を立てていた職種の人々は、終末以降はそれで暮らし続けることが不可能となり、一斉に失職。大急ぎで次の仕事をみつけなければいけない、世の中は空前絶後の「大転職時代」を迎えたのであります。
パーシェルは創世に関わった十一神竜の一体、断罪竜様。八百年ほど人の歴史の裏に潜んでおりました。ぶっちゃけて他の神竜の方々とは違い、王立軍の最深部で神様の特権だけ、甘い汁をちゅーちゅー吸うだけの日々。表舞台でなーんの活躍もしませんでした。
エリーは断罪竜様にお仕えするための神器、裁竜ウィル=エリーと申す立場っす。断罪竜様は魂と肉体が分割した二柱の神様で、パーシェルの半神・ミリアンナ様は他の神竜様の誰よりも自らの職務に忠実なお方。お勤めに専念するため、お邪魔にならないよう、エリーはパーシェルと行動を共にしているのです。
あの勤勉なミリー様の半神たるパーシェルが、人間様が日々勤労して王立軍に納めている税金を当てにして、趣味の本を好き放題に買い与えられて恥とも思わず享受する。そんな自堕落な性質だとわかって心底がっかりしましたし、今でも軽蔑してるっす! マジのガチで!
終末を迎えると神竜様は普通の人と同じ体になり、その力を失いました。パーシェルは早々に、お世話になってきた王立軍を退役したっす。八百年分の退職金を一度に受け取ったら国が傾きかねないということで、毎月の分割払いをしていただいていて、要するに今後は一生遊んで暮らせる高等遊民状態でぶらぶらと遊び歩いているのであります。引きこもりの趣味人とはいえ仮にも王立軍にお勤めの身分だったのと、外を出歩くようになったとはいえ無職の趣味人。どっちがマシだったと思われます? エリーは自分の主がこんな堕落しきっているという現実が恥ずかしくて涙が出てしまいそうです。とほほのほ~っすよ。
パーシェルを見つけ出すのにどれほどの苦労があったのかわかりませんが、ノア様はようやく目標をひとつ果たした喜びで興奮状態。お外でこのまま話し続けるのは世間の皆様にご迷惑でしょうから、パーシェルは渋々、いま現在の自宅に青年ふたりを招きました。
「かくかくしかじかで、ボク達のきょうだい……神竜族の生き残り達が困っていて、自由を求めて革命を起こそうとしているんです。ボクは王宮から出られない彼らに代わって各地を旅して、仲間を集めています。パー様の知識をお借りしたくて探していたんですよ。あなたと彼らは七百年前から、幾度も交流があったそうじゃないですか」
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