神様、転職します。

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 それから、エリーはとりあえず、簡単に出来ると思えたお仕事から始めることにしたっす。街頭に立って、チラシを配るお仕事。やること自体は簡単でも、求められた内容を達成するという意味では、決して簡単ではなかったっす。それでも、最初の一歩としては上々だったと思いたいっす。  自分にとってやりがいや楽しさを感じられるお勤めが見つけられるよう、短期のお仕事を数多く経験してみることにしたっす。  一か月間、軽食の飲食店に勤めて、最後の出勤日。仲良くしていただいた同僚の青年から、こんなことを言われたっす。 「エリーさん。あなたとこれっきりでお別れなんて寂しいです。これからは同僚ではなく、結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」  たった一か月の同僚関係でここまで思い入れるとは、情熱的な方っすね。  結婚を前提に、という表現に、思い出しました。「エリーが誰かに娶られるまでは」と言った、彼の言葉を。 「……ごめんなさい。エリーには、これからもずっとよろしくしていきたい御方が、すでにいるのですよ」  彼以外の異性に初めて、このような気持ちを伝えられたことで、逆に自覚できたっす。  好きでもなんでもない殿方と、いくらそれが義務だからって、八百年も運命を共に出来るはずがなかったっす。それが彼だったから、エリーは八百年の務めを全う出来たのだと。  アクアは八百年もの長きに渡って神として生き、人々との出会いと別れを繰り返してきたっす。ゆえに、別れの痛みを抱えずに済むように、他者への関心を遥か昔に枯渇させてしまったっす。  これからエリーがずぅっと彼と共にいたとして、エリーの気持ちが彼に届く保証はない。だとしても、エリーはこれからも彼とよろしくやっていくっす。  それからエリー達がどんな仲になったのかは、乙女の秘密であります。ただひとつ言えるのは……。  エリーは彼のところへ、非正規永久就職しました。だいたいそんな感じっす。
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