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平日の輝かしい青空の真下でも、彼奴は相も変わらず読書に勤しんでいます。そんなの室内でだって出来るんだから、外に出た時くらいはそこでしか出来ないことを楽しめばいいのにって感じっす。
趣味だから読んでいる最中楽しんでいるはずなのに、その端正な真顔は微動だにしない。八百年も暗い屋内に閉じこもって読書ばかりしていた顔は色もなまっちろいし、手足は細くてガリガリだし。
エリーはそんな男を、丸テーブルを挟んだ正面から眺めるばかりの日々。彼奴はいっつもこうなんであります。一緒にいる、それも好き好んでそうしてるわけじゃなく義務で付き合ってるエリーがこ~んなに退屈してるのに、お構いなしのほったらかし。自分の好きなことにだけ熱中しちゃって。本当、気が利かないことこの上ないっす。
「やぁ~っと見つけましたよ! パーシェル様っ」
平日といえば真っ当な大人はお勤め中。教会運営の移動式「青空図書館」にいるのはお年寄りとか、抱っこひもの中でお眠り中の赤ちゃん連れのご母堂とか。要するにいたって静かなこの場所に、甲高い、喜色に満ちた青年の澄んだ声が響き渡り、ご老人は次々と、青年に驚きの目線を投げやります。
青い髪の青年のお隣に、紫髪の青年がいて、ちょっと困ったような顔でお連れさんの腋をつんつん、指先で突っつきます。
「あ、ごめんごめん。こういう場所では静かにしなきゃだよね」
青年は周囲の人々へ愛想笑いを浮かべながらぺこぺこと、頭を下げながらその場で半周ほど回るのでした。悪気があって騒いだわけじゃなかったみたいっすね。
「やっと見つけたも何も、吾は別段、逃げも隠れもしていないのだが……そう言う君こそ何者だね?」
ちょうど手持ちの本を読み終わったところだったのでしょう。そうでなければこうして声をかけられたところで、「読み終わるまでそこで待っていろ」と相手にしないのが彼奴の流儀。ぱたん、と心地よい音を響かせて本を閉じたっす。エリーはこの音が、何とも言えず好きだったりします。読んでる最中は無表情でも、読み終えた後に頭の中だけで感想を整理している際のその顔は、なんだか「極上の料理を味わった直後」みたいな様々な感情が浮かんでいるから。
「ボクはノア。パーシェル様と同じく、元神竜の生存者です」
神竜とはいえ格落ちですけど、と彼は頭を下げました。
「今はお互い人間の身だ。人の格には下も上もないのだから、そのようにへりくだる必要などあるまい」
「ありがとうございます。でしたら遠慮なく、パー様と呼ばせていただきますね」
「その通称をどこで知ったのかね?」
「終末に死に別れたボクの兄から、あなたとの思い出話をうかがっていたもので……」
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