登校:カフェオレがお好み

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 朝九時、出勤。平日はいつも夕方からのシフトだけど、休日のバイト時間はバラバラだ。今日は朝から入ってるし、十六時にアップだ。その後は映画! 長丁場の仕事だけど、この後映画だと思うと耐えられる。しかもデッドエンド2! 来週の部活までには見ておきたいし、今日、晴れて本当に良かった! お出かけ日和過ぎるじゃん!  昼のピークを越え、パートのおばちゃんが発注作業をしている間、僕はトイレ掃除をすることにした。 「僕、トイレ掃除してきますね」 「あら、ありがとう井川くん」  二つある個室の一つを掃除し終え、二つ目に取り掛かろうとした時、ふと人の気配を感じて振り返った。 「よぉ」 「おつかれー!」  そこには、店の向かいにあるガソリンスタンドで仕事をしているお兄さんが二人、立っていた。 「あ、いらっしゃいませ。トイレですか?」  尋ねると二人はゴメンと苦笑いする。 「大丈夫です。どうぞ」  二人は「ガソリンスタンド(自分とこ)でして来いよな~」と互いに言い合いながら、最終的に「コンビニ(こっち)のがトイレ綺麗なんだよ」と言い合あって、それぞれ個室に消えて行った。  あぁ……そうなんだね。ガソリンスタンドのトイレなんて、人生で一度も使わせてもらったことないけど、……汚いのか? 少なくとも、向かいのガソリンスタンドは汚いのだろう。というか、どこにトイレがあるんだ?  雑誌棚を整頓しながら向かいのスタンドを見つめる。ここ近年セルフスタンドが増えてきている中、向かいのスタンドはきちんとスタッフが給油サービスを行っている上、二十四時間営業でもない。珍しい。給油の最中には窓ガラスを拭き上げ、車の出入り時にはしっかり誘導する。ちなみにスタッフは……たぶんだが……100%、男しかいない。かつてあのガソリンスタンドに立つ紅一点の女性を見た事が無いのだ。  トイレからほぼ同時に出てきたスタンドのお兄さんたちは手を洗いながら「今日の昼飯、ラーメン食おっかな~」なんて話している。  正直に言おう。  このスタンドのお兄さん達、ちょっとヤンキー風なんだよね。学生バイトでは決してないんだけど、昔やんちゃしてました、と誰の目にも分かる風貌をしている。視線をお兄さん達から向かいのスタンドへと戻すが、あちらで今サービスをしているスタッフさん達も、こぞって「ヤンキー風」だ。車好きが高じてガソリンスタンドで仕事をしているのがありありと伺える。  ちなみに、今トイレを済ませた片一方は、たぶん整備士だと思われる。制服の色が一人違うから。
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