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週末にデッドエンド2を観に行けたから、週明けの部活は盛り上がった。まーくん先輩もあっちゃん先輩も本当にいい人達! とても楽しい部活に入ったと思っている。
そんなこんなで、水曜日。今日の映画は恋愛映画だった。手を繋ぎ、抱きしめあって、キスをしていた。
いつものように観賞を終え、和気藹々と感想を言い合う。まーくん先輩は「あの女優可愛い~!」て言ってて、あっちゃん先輩は「でもちょっとペチャパイなんだよな~」と笑った。そこが控えめでいいんじゃんとか、俺はボインがいいわとか、楽しい会話が織りなされる。いつも通りの風景だ。それをニコニコしながら聞き、僕はおっぱいよりお尻の方が好きだな、なんてぼんやり考えていた。そんな僕にまーくん先輩が「井川君はどっち派?」と聞いてくるから、苦笑いしながら首を捻った。
「な……ないよりは、ある方が……そりゃいいけど」
恥ずかしさで死ぬかと思った。
こういう会話、正直苦手なんだ。なんかすごく緊張しちゃって。簡単に皆みたいに下ネタを喋れないし、自分の好みでさえ言うのをためらってしまう。変態、なんてかつて言われたことはないけど、そんな風に思われちゃうような気がして、それが少し怖い。だから決して、おっぱいよりお尻の方が好きなんて言えるわけはないのだ。
恥ずかしさで俯いてしまった僕に、二人はきょとんとし、ふと、とんでもないことを言い出した。
「ねぇ。R指定の付いた作品って見たことある?」
まーくん先輩がいきなりそんなことを言った。ぎょっとせずにはいられない。僕まだ十五歳だ。まーくん先輩の誕生日など知らないけど、もう十八歳になっている可能性もあるわけで、R指定なんて大人すぎてびっくりする!
あっちゃん先輩は「ない!」と期待に輝く目で威勢よく返事する。僕は何も言えなくて……、だけどまーくん先輩がじっと見つめてくるから、小さく首を振った。すると先輩は嬉しそうににんまり笑って言ったのだ。
「R15なら見れるだろ? 明日持ってこようか。それとも、時間あるなら今から俺んち来る?」
あっちゃん先輩は「行く!」と即答だ。僕は……僕は……。
「…………バイト、休みなので……行きます」
「よし来た!」
先輩二人に肩を組まれながら、僕は「ホントに大丈夫なのか?」と心配になりながら一緒に学校を出た。
電車通学の先輩達は駅まで徒歩だ。自転車を押しながら、三人並んで駅に向かっていると、スタンドのお兄さんが僕に声を掛けてきた。
「お帰り、梓ちゃん!」
坊主頭ののぶさんだ。ルックスは一番ヤンキー。バリバリ文科系の先輩達がのぶさんにビクっと強張ったのが分かる。分かるよ、怖いよね、このルックス。
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