何も無い場所、何も無い人

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明日 自分がこの世から消えているなんて 誰がリアルに想像するだろう 戦地でもない この平和な場所で 今この場所でも 安全な室内に居ても ミサイルが飛んで来るかもしれない 地震や災害で死ぬかもしれない 激しく猛り狂う稲妻が 自分の頭上に落ちて来るかもしれない ”そうなったらどうしようか” 私は不安に襲われる でも それよりも困るのは 何日も停電や断水になる事 私が心配なのは自分が死ぬ事よりも 冷凍庫の中の高いアイスクリームが溶けてしまう事 残された鳥達が 水や餌も貰えずに死んでしまう事 此処は滅多に停電にならないし 大きな災害も無いけれど 何処かで人が死んで 近隣の市でも避難指示が出ている ”避難?” ”何処に?” それが何処にあるか私は知らないし ヒナンジョには他にも多くの人が来るでしょう? そんな場所に 私は長くは居られない 私には自然災害よりも人災のほうがずっと怖い あっという間に襲い掛かって来る自然より ジワジワと音も立てずに忍び寄って来る人間に 時間を掛けていたぶられるほうが ずっとずっと怖い 私が避難出来る場所は この世界の何処にも無い そしてやっぱり 私が心配なのは 相も変わらずアイスクリームや鳥達の事 部屋が薄暗いのには慣れているけれど 真っ暗になったら懐中電灯と蝋燭だけ 使える調理器具も何も無い 何も無い場所で 何も無い”空っぽな自分”で 無為に生きていく事のほうが辛い かといって また目標を立てて頑張る気力も体力も 今はもう無い 何もかも 涸れ果ててしまった 枯渇 干上がった湖 砂漠 何も無い 私にはもう何も無い 出来る事が何も無い 自分が何も出来なくなるのが恐いから 便利な物にはなるべく頼らないようにしていたけれど いつの間にか忘れていた 私には元々『生きる才能』が無いんだって こんなに長く 予定よりこんなにも長く 生きてしまったけれど (2022年9月24~28日にかけて書いた詩)
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