野戦ドクター・森村 真希

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私は近くに居た自衛隊員に、望月の居た基地を強襲した部隊は、ベア隊ではないと必死に説明した。 しかし、民間人である私の言葉を信じてくれる自衛隊員は、一人も居なかった。 それどころか、私達がこれから乗る帰国用の飛行機には、航空自衛隊のF-15戦闘機が護衛に付くことが説明され、私達には護衛機がつくのだから、安心して大丈夫だと逆に言われてしまう程だった。 自衛隊員にそう促されて、兎に角一刻も早くこの場所を離れたかった私は、私達を誘導する自衛隊員が言うままに脱出用の航空機へと乗り込むと、我々を乗せた飛行機は、まもなく同空港を飛び立った。 滑走路を離陸して10分程が経ち、一定の高度まで上昇した飛行機は、まもなく水平飛行へと移行し、私の頭の上で点灯していたベルト着用サインのランプも消えた。 私はそのタイミングで腰に巻き付いていたベルトを外すと、窓の外が見える場所へと移動し、小さな窓から外を眺め始める。 この飛行機は、どうやら広大な山脈の上を通過している最中のようだ。 この飛行機がどのくらいの高さで飛行しているのかは分からないが、窓から下を見下ろした時の山脈の絶景は素晴らしく、この景色が張り詰めていた私の心に癒やしを与えたのは間違いない。 眼下に広がる絶景に、一瞬自分の置かれた状況を忘れてしまった私は、次は高高度からの水平線を眺めようと思い、連なる山々を見下ろしていた目線を、ぐっと上げて水平線を見やる。 だが、私の視界に飛び込んで来たのは綺麗な水平線ではなく、私達の飛行機と並走しているF-15戦闘機の姿だった。 目の前に広がる現実に、一瞬で幻想を打ち砕かれた私は、何があるか分からないからとその足でトイレを済ませ、すごすごと席に戻ろうとした、、、その時だった!! 両耳が聞こえなくなったのでは無いかと思うほどの耳鳴りが私を襲ったかと思えば、たちまち大地震に見舞われたかのように地面が揺れ、私は機内の壁に身体ごと激しく打ち付けられた。 機内にはとてつもない音量で悲鳴がこだましていて、混乱する人々をかき分けるようにして、私の元に駆け寄ってきた自衛隊員によって私は近くの席へと押し付けるように座らされ、その隊員に言われるがままに、きつくベルトを閉める。 私を助けてくれた隊員も、私の席の横で着席してベルトを締めると、一番窓側に座っている私の隙間を縫うように窓の外を凝視していた。 私も隊員の視線につられて外を見ると、そこには炎に包まれながら落下していくF-15戦闘機の姿があった。
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