野戦ドクター・森村 真希

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「こちらは航空自衛隊早期警戒管制機。当機の対空レーダーが、敵性勢力による我が輸送隊への攻撃を確認した。民間人輸送中の輸送機は、直ちに西へ離脱せよ。戦闘機隊へ。攻撃を仕掛けてきた目標に関するレーダー反応無し。ただし、攻撃に使用されたミサイルの発射地点は、そんなに遠くはない。よって、今の攻撃はステルス戦闘機によるミサイル攻撃である可能性が高い」 私の隣に座る自衛官の身につけている無線からは、偵察機からの大まかな情報が立て続けに流れてきている。 その大半は何を言っているのか分からないような暗号めいた言葉ばかりだったが、私の耳に確かに聞こえた言葉の中に、[攻撃してきたのはステルス戦闘機である可能性が高い]という言葉が、その部分だけは確かに聞いて取れた。 「ステルス戦闘機って、レーダーに映らないの? だったら戦う術がないじゃない?」 悲鳴と怒号が飛び交い、完全なパニック状態となった機内の中で、私は隣の自衛官の胸倉を掴むようにして問いただした。 すると、横に居た自衛官は早口でステルス戦闘機の特徴を解説し始めたが、もはや周囲の空気にのまれかけていた私に、自衛官の説明が届くことは、ほぼ無かった。 「ステルス戦闘機からの攻撃!? 死神だ! 奴等が俺達を狩りに来たんだ!」 混乱を極める機内で泣き叫んでいる人々の中に、空港を発つ間際に死神の事を説明しても、私の話に耳を貸さなかった自衛官の姿もあった。 だが、私はこの自衛官が叫んだ死神という言葉にある可能性を閃くと、横に座っている自衛官を強引に連れ出し、この輸送機のコックピットへと向かった。 「何をしているんですか? ここは民間人の立ち入りは禁じられています。危ないので席に戻って!」 コックピットに通じる扉の前で私を静止する自衛官に、私が閃いた内容と作戦を伝えている間に、後ろで席についている民間人達がまた悲鳴を上げていることに、私はすぐに気がついた。 「また戦闘機がやられた!」 私はパニックに陥っている民間人の発した叫び声から、自分に必要な物だけを拾い集め、それを材料に加えながら、自分をコックピットに入れるようにと門番をしている自衛官に頼み込む。 すると、私の立案を試す価値があると判断した自衛官は、ついに私の説得に応じて、私をコックピット内へと招き入れてくれたのだった。
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