野戦ドクター・森村 真希

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さて、話を戻す事にする。 本来我々STARSは、運営母体である国連からの要請や指示に従って活動する。 だが今回は、医療支援を必要としている現地の野戦病院に人的余裕と時間的余裕がなく、STARSとして派遣するチームを編成している余裕がなかったと説明を受けた。 よって、侵略を受けている場所に近い国に国籍を持っているSTARSの医師を、その国のサポートを受けながら個人単位で直接現地へ派遣し、各々が派遣された現地で人数が集まった所で、臨時チームとして機能させる措置がとられたと言う事だった。 しかし、今回は戦闘地域から離れた場所にある難民キャンプのような場所での医療支援ではなく、国同士の軍隊が戦闘を繰り広げている前線基地での医療支援となる。 以上の理由から、国連としても派遣したSTARSの医師達の安全を守るために、臨時に特別治安維持部隊を組織する必要があったが、これも国連に加盟する各国政府との交渉からスタートせねばならず、それを待っている余裕もないのは明白だった。 そこで国連は、要請に基づいて派遣したSTARSの医師を、国連が用意する治安維持部隊が派遣されるまでの期間だけ、臨時にその国の衛生兵として参加させるように、各国政府に働きかけた。 こうする事によって、国連がSTARSの面々を守る治安維持部隊を派遣するまでの間は、STARSの医師が所属する国の兵士達によって、医師達の安全も保証される仕組みを作り上げたのだった。 とは言え、いくら衛生兵と言っても、STARS所属の医師が最前線で負傷兵の救護にあたるような事はなく、衛生兵として参加したSTARSの医師は、肩書きこそその国の衛生兵であるが、実態はあくまで国連医療支援チームの一員として、安全の確保された前線基地での医療支援を行うという事となった。 そう言った事情の元、私は陸上自衛隊の臨時隊員として現地の医療支援に参加する事になり、彼等に案内されるがままたどり着いた野戦病院にて、自衛隊兼STARSの医師として、現在の職務についている。
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