野戦ドクター・森村 真希

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空港へ向かう道中。 私は早速、先程自衛隊員から預かった封筒を開封する事にした。 するとそこには、この手紙を渡してくれた自衛隊員が、望月と同期の自衛隊員である事と、彼とは親しい友人関係であると言う事が書かれていた。 それに、望月が無事である事。 更には、望月が滞在していた基地を強襲した敵戦闘機隊が、我々の同盟軍の協力のもと、全機撃墜されたという事が記してあった。 まずは望月の安否が確認出来た事と、私自身も無事に日本へ帰国できる目処がついた事に、私は大きな安心と安らぎを手に入れる事が出来たと思った。 この手紙の、最後の一文を見るまでは。 [追伸。これは機密事項なので他言はしないで欲しいのですが、死神が操っていた戦闘機は、MIG-29と言う旧式モデルの戦闘機でした。ロシアもそのへんの財政事情は苦しいのかもしれませんが、終わってみれば死神とは名ばかりの、お粗末な旧式軍団でしたね] これを見たとき、私は全身の血の気が体中から引いていくのを、はっきりと感じた。 だって違うのだ。 MIG-29と言う戦闘機がどんな戦闘機なのかなんて、私には分からない。 でもあの時、私がベアに助けられたあの時、彼は確かに本職は戦闘機乗りだと言っていた。 だがスペツナズは、全ての事柄について戦闘能力を高める訓練を行っているので、空軍兵である彼等が、私達を助ける事も十分に可能なのだと教えてくれたのだ。 その時、私は確かにベアの愛機の名前を聞き、命の恩人の乗機の名前をメモにとって保管していた。 正確な名前を思い出すことは出来ないが、彼がその時言っていた戦闘機の名前は、MIGで始まる名前ではないと言うことは、今の私にもはっきりと断言できる。 そうだ。 あの時に戦闘機の名前をメモした手帳は、今私の膝の上に乗っているバッグの中にある。 それを思い出した私は、何かに取り憑かれたように手帳のページをめくり、ベアの乗機の名前が記されたページを必死に探す。 そして見つけたベアの操る戦闘機の名前を見て、私は一人バスの中でがっくりと肩を落とした。 [SU-57・PAC-FA  STEALTH FIGHTER] 私はあの時、ベアから直接聞いた彼の愛機の名前が、確かにこれだった事をはっきりと思い出した。
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