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ラプラスの行動は逐一班長のもとに報告され、また別のチームはラプラスの訪れた場所や接触した人物を調べて報告する。班長はその情報からラプラスの目的を突き止めようとしていた。
※ ※ ※ ※ ※
ラプラスは一箇所に留まらず、まるで観光旅行をしに来たみたいに日本各地を移動した。
「で、わかったことは」
「はい。まとめますと、ラプラスは旅行会社とイベント会社に依頼しています。旅行会社には国内旅行の目ぼしいところを訊いて実際に行くため、イベント会社の方ですが……」
「どうかしたのか」
「趣旨が分からないんです。ちいさなイベントを複数依頼しているんですが、どれもこれも関連性が無いんです」
部下の報告を聞きながら資料に目を通すと、班長の目がキラリと光る。
「どのイベントも同じ日、同じ場所で開かれるぞ。来月17日の広島の観光ホテルだ」
「ああ、そういえば」
そこへ尾行チームからの連絡が届く。ラプラスは広島の観光ホテルに泊まると。
「しかも滞在日数は一週間程です。今までは一泊か二泊ばかりだったのに」
そのホテルは、例の広島の観光ホテルだった。
「決まりだな。広島県警に連絡して協力をあおいでくれ」
※ ※ ※ ※ ※
くだんの観光ホテルは山間部の最頂部に建っており、眼下には他のホテルや旅館のある観光地とその向こうに見える市街地、そして遠くには瀬戸内海が見える絶景の場所だった。
「夜は街の灯りで夜景が素晴らしいらしいですよ」
「来たことあるのか」
「パンフレットに載ってました」
班長と部下はホテル側には内緒で、同じホテルに泊まっていた。
「あれから変わったことはなかったか」
「今のところは。まあ国際的テロリストが来るというので、県警が張り切った結果、県内の反社組織の検挙数がはね上がったくらいですかね」
部下の報告に班長は苦笑した。
「本当になにか起きるんでしょうか」
「おそらくな。そしてそれは明日の17日だ。その日はラプラスが依頼したイベントがここで開催されるし、ラプラス本人もチェックアウトする日だからな」
そのラプラスは、チェックインしたあとは出かけることもなく、毎日ニュース番組を観たり、テラスからの景色を観たりして過ごしていた。
できればなにも起きないでほしいと思いつつ、その反面、世界中の警察や情報機関が捕まえられなかった国際的テロリストを逮捕してやりたいとも思う。
班長はすべては明日だと、無理矢理心を落ち着けさせた。
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