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「ラプラスが依頼したイベントそのものは意味はありません。大事なのは集められたメンバーです。いや、それすらも大事ではありません。大事なのは人数、ホテルが満室になるほどの──雨男雨女の集団です」
突然妙なことを聞いたせいか、大親分は眉をひそめる。
「雨男雨女を集めた理由、それは雨を降らせるという目的だと考えられます。そうすると[場所]と[日にち]にも意味がでてくる。ここ中国地方は土砂災害危険箇所が国内でもワースト3を占めるほど多く、山口、島根、そして広島がそれに当たる。理由は真砂土のせいです。水を含むと非常にもろくて崩れやすい性質ゆえに。おそらくラプラスは依頼された[場所]が広島だったからそのやり方を選んだんでしょう。となると[日にち]もそれに関連したことになる」
「土砂災害が起きた日は17日だったな。なんの日なんだ」
「体育の日」
「体育の日は10月10日だ」
「そう、我々昭和生まれにとって体育の日は10月10日です。なぜその日になったかご存知ですか」
「たしか東京オリンピックが開催されたからだろう」
「その通りです。ですがもうひとつ理由があります、それは[晴れの特異日]だったからです」
「[晴れの特異日]とは」
「気象庁のデータによると11月3日と10月10日はほぼ晴れになる。それゆえ[晴れの特異日]なのです。ということは逆に[雨の特異日]があるのではないのかと考え調べてみました、そしてありました。それが──今月17日、つまり7月17日です」
「……つまり、[雨の特異日]である今月17日に[土砂災害危険箇所]の広島に大勢の雨男雨女を集めて集中豪雨による土砂災害を起こしたと言いたいのかね、馬鹿馬鹿しい」
「そう、誰もが一笑に付す馬鹿馬鹿しい話です。だが世界中でたったひとり、それを本気で信じて実行し、成功させたヤツがいる──それがラプラスなんです」
「国際的テロリストが、そんなあやふやな計画を立てたと。頭は大丈夫かね」
「残念ながら正常です。この説を思いついたときは私も自分の正気を疑いました。ですがこのあやふやな計画を高確率の成功に持っていく因子があることに気がついたんです」
「それは」
「ラプラス本人です」
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