ラプラス・プランナー[読みきり]

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 ──国際的テロリストである[ラプラス・プランナー]がやってくる──  その情報を掴んだ日本の公安は、色めき立った。 [ラプラス・プランナー]未曾有の大災害を起こす大物テロリストで、彼が立ち寄った国々では必ず死者が多数でるという。 ※ ※ ※ ※ ※  日本の某所で対策班が編成され、今まさにレクチャーが始まるところだった。 「──ラプラス・プランナー、性別が男と分かっている以外ほとんど情報がない。身長173cm程度、髪は黒、瞳はブラウン、推定黄色人種、国籍不明、年齢不明推定30前半、血液型AB、以上」 「つまりほとんど分かってないということか」  若い部下の報告にベテランの班長がこたえ、頷いたあと説明を続けられる。 「コード・ネームの由来はフランスの数学者、ピエール=シモン・ラプラスによる[ラプラスの悪魔]からで、物理学分野における因果律に基づいて未来の決定性を論じる時に仮想された超越的存在の概念という、簡単に言うと未来を予想できるくらい超頭が良いという意味です」 「超頭の良い計画立案者、でラプラス・プランナーか。長いから今後はラプラスと呼称する。で、ラプラスの経歴は」 「名が知れてきたのはここ数年で、大きなテロ事件や災害があると、そこに必ずと言っていいほど現場にいます。テロ事件が起きると世界各地のテロ組織が犯行声明を上げますが、大抵はブラフで情報が雑交します。それを精査すると手段が判らない事件が残り、それがラプラスの仕業と言われてます」 「なぜラプラスの仕業だと」 「事件を調べると、テロの依頼人が判明したりして、そいつ等がラプラスに依頼したというので。ですが犯行方法がまったく判らない、なので未だにどこの国も捕まえていないという状況です」 「どちらにしろ“招かれざる客”ということだな。対策はどうなっている」 「到着時刻は分かっているので、とりあえずチームを組んでラプラスを行動観察(行観)しつつ、来日理由の情報を集めます」  班長はGOサインを出し、チームは行動開始した。 ※ ※ ※ ※ ※  成田国際空港で行観チームが見張っていると、ターゲットがゲートから出てくる。 「あれがラプラスか。ちょっとイイ男だな」 「パスポートには“ハザマユウリ”と名乗ってます。どうせ偽名でしょうけど」  チャコール色のスーツを着た、外国人役をやる日本人みたいな彫りの深い顔の男が、荷物を受け取り、タクシーに乗り込む。  チームは尾行を開始した。
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