雨の日のナポリタン

　まずは朝。いつもより早く家を出たのに電車は混んでいた。雨のせいで電車が遅延していたらしい。結局いつもと変わらない時間の出社となった。

　会社に着いた後も、どうにも頭痛が治まらないから鎮痛剤を飲もうとしたのに、薬の入っているポーチの中は空になっていた。最後に使った時、最後の１回分だったので補充しなきゃと思っていたことを完全に忘れていた。

　極めつけは午後の会議。月一の検討会議。今日は私が発表をする日で、この日のために後輩と協力して完璧な資料を作り上げた……はずだったのに、発表中に資料が話の内容と合っていないと指摘が来た。スクリーンに映された資料の内容を見ると、確かに数値が合っていない。後輩が投影した資料が古かったのだ。

　資料をお願いしていた後輩は普段はきっちりしていて、こんなミスしたことがなかった。そして、もしそんなミスをしても私が事前に確認して見つけていたはず。仮にそれをスルーしても発表中にスクリーンを見ていればすぐに気付けたはずだった。

　頭痛のせいで集中できていなかったというのは言い訳にしかならない。上司からたっぷりと怒られてから席に戻ると、後輩が私の席にやって来た。

「すみませんでした。私の確認ミスでご迷惑をおかけしてしまって……」

　今にも泣きそうな後輩の姿を見ていると、昔の自分を見ているようでより一層苦しくなった。