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「私も新人の頃やったことあるんだよね。その時は先輩に指摘されたんだけど、今回私の確認が足りて無くて指摘できなかった。ごめん。今後同じことしないよう、ちゃんとダブルチェックしていこう」
後輩をなんとかなだめてから仕事に戻ったものの、頭痛が治まらず仕事がはかどりそうになかった。今週中にやらなければいけない仕事はたくさん残っていたけど、定時を少し過ぎたところで帰ることにした。
だけど電車に乗る時、残業しなかったことを後悔した。この時間は電車が一番混む時間だった。残業無しで帰る会社員と高校生の帰宅時間が重なって車両の中はぎゅうぎゅうだった。
やっとの思いで最寄り駅にたどり着いたものの、頭痛がピークを迎えており、人の波にのまれたくなくて大通りから一本それた裏道に足を向ける。まだ振り続ける雨を恨みながら傘をさしてフラフラと歩いていると、ヒールの先が道路の溝にはまってしまったのか、右足が動かなくなってしまった。
「もう……何なのよ」
半ばキレ気味になって足を上げようとすると、パキッという音とともにヒールの先だけが地面に残ったまま足だけが地面から離れた。きれいにヒール部分が靴から外れていたのだ。ついていない、そう言ってしまえばそれまでだけど、そんなことがあまりにも続きすぎてもうウンザリしていた。
「何やっても駄目……もう嫌だ……」
その場にうずくまっていると、後ろから声がした。
「あの……大丈夫ですか?」
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