雨の日のナポリタン

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 お腹が空いていたこともあって、あっという間に食べきってしまった。そして、食べ終わって気付いた。 「頭痛が治まってる……」  さっきまで私を苦しませていたあの痛みがだいぶ弱まっていた。空腹が満たされた満足感でほとんど気にならないくらいに。 「あの……もしかして頭痛に悩まされていたりします?」  私の呟きが聞こえていたのか、さっきの店員さん……オーナーさんが私の顔を覗き込んだ。 「まあ、雨が降ったときとかに少し……」  その言葉を聞いて、オーナーさんは食後にコーヒーを出してくれた。 「あ……私コーヒーってあんまり飲めないんですけど……」  言いかけてやめた。目の前のコーヒーカップからは香ばしい香りというよりは甘い香りが漂ってきた。 「こちらは僕からのサービスなんで、一口だけでもどうぞ」  飲んでみると、私の苦手な苦々しい香ばしさと苦味ではなく、フルーティな香りと果実味のある酸味が広がって私にも美味しく飲めるコーヒーだった。 「これ、美味しいです。私あんまりコーヒー飲まないんですけど、これは美味しいですね」  オーナーの顔を見ると、嬉しそうにこちらを見ていた。 「気圧が原因で頭痛が起こる時はカフェインの摂取がいいそうですよ。あとコーヒーには体の余分な水分を排出する効果があってむくみとかも取れるのでお勧めです。あ、でも寝る前は控えてくださいね」  気付けば朝から続いていた不快感が嘘のように消えていた。このカフェの落ち着いた感じがストレスを解消させたからなのか、空腹がなくなったからなのか、コーヒーの作用なのか。もしかしたらその全てなのかもしれない。 「ありがとうございました。美味しかったです。……あの、また来ていいですか?」  オーナーさんはお金を受け取りながら、「もちろんです。雨の日にいつでもお待ちしています」そう言ってくれた。  この日は家に帰ってからもほとんど頭痛が気になることもなく、ぐっすりと眠ることが出来た。
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