雨の日のナポリタン

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 確か写真を撮っていたはず、と思い出してスマートフォンのフォルダを確認すると、撮ったはずの写真が全て無くなっていた。そんな……確かに撮ったはずなのに。  慌てる私に対して、店長さんは完全に疑っている訳でも無さそうだった。 「あの、提案なんですけど、うちのナポリタンを食べてみてもらえませんか? それで感想、というかお客様の食べたナポリタンとの違いを教えて頂きたいんですがいかがでしょう」  私は頷くしかなかった。10分後、目の前に美味しそうなナポリタンが置かれた。フォークで麺を巻き付け、最後に具材を突き刺して口に運ぶ。太麺で具材は玉ねぎとピーマン、ウインナーと変わらない。だけど…… 「私が食べたものと凄く似てるんですけど、味が少し違います。私の食べたナポリタン、確かにまろやかでしたけどここまでクリームの感じが強くなかったし、もう少し酸味があって、もっと水分が少なかったと思います」  私の言葉に店長さんと隣りにいた店員さんが顔を見合わせて頷いていた。 「ありがとうございます。あなたが食べたナポリタンは本物かもしれません。……だよな、陽奈(ひな)」  隣りにいた陽奈と呼ばれた女性の店員さんは小さく頷いた。 「彼女はあなたにナポリタンを作った人の婚約者でした。あいつのナポリタンを一番良く知っている人です。彼女とあなたの感想は同じでした。だから雨の日メニューとして出していたナポリタンを食べていることは確かなんだと思います。……あの、もう一度確認なんですけど、5年前にそのナポリタンを食べているということはないんですかね」
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