その後

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その後

 あの(あと)。  わたしたちは本の都市伝説を討伐できたことを、数分だけ喜んだ。  けど、よくよく考えてみれば、『不思議研究同好会』は活動停止期間中。  もしみんなで集まっていたことがバレてしまったら、さらなる(ばつ)が加えられるかもしれない。  わたしとみももちゃん、そして零くんは早々に変身を解いた。  そして部長と史子さん、英輔くんと一緒に本の都市伝説の残骸だけ、いっぺんも残らずかき集め、図書室を後にする。  わたしがタロットに頼んだ効果は願えばすぐ消えて、図書室の入り口で倒れたみんなも何事もなく起き上がり、みんな、自分たちはなんでこんなところで寝ていたのかわからずに戸惑いながらも、日常へと戻っていった。  梨花さんもまた普通に意識を取り戻し、数回首を傾げていたけど、また図書室へと入っていった。  本の都市伝説の残骸は、口寄せ師の英輔くんが語りかけてもなんの反応もなく、そのあと零くんが炎で全て灰にした。  あの本の都市伝説の元になった本が語った『おばあちゃんの昔話』は作り話なのか、本当のことなのか。  気になるけど、今はまだ調べる勇気が出なくて……。  そしてまたいつも通り。  次々と噂されて生まれてくる新しい都市伝説やあやかしを、わたしたちは討伐していく。  だけど仲間たちの心に引っかかっているのは、本の都市伝説が残した言葉だ。    都市伝説を発生させている原因は、五年前の春にこの学校にやってきた。  それは、わたしが入学した年の春。  その年に入学したり転校したりしてこの学校に通っている誰かが、都市伝説を呼び寄せているのか。  わたしは顎の少し上を撫でる毛先のくすぐったさを少し気にしながら、徐々に賑やかになっていく朝の教室でクラスメイトを眺めて、思う。  このクラスの中に、都市伝説やあやかしを生み出す人が居たりするのかな。  そんなわたしに耳に、毎朝恒例の一軍女子のひそひそ話が届いてきた。 「……呪いの日本人形、こけしになってない?」 「うん、あれはどう見ても、こけし」 「呪いのこけしだ」  日本人形の次は、こけし、か。  ちょっとゲンナリしたわたしの頭の中で響くのは、本の都市伝説がわたしにかけた呪いの言葉だ。  あんたはこの先、『大きな真実』の前に打ちのめされるだろう。  大きな真実って一体なんだろう。  考えを巡らせ始めたわたしの耳に、思いもよらなかった言葉が飛び込んできた。 「あんたたちさぁ、もうそういうのやめない?」  びっくりしてそちらを見ると、声の主は驚いている一軍女子に囲まれて、うざったそうに頬杖をついていた。  昨日、わたしが助けた梨花さんだ。 「どうしたの梨花……」 「いつもは真っ先にあの子に何か言ってたじゃん……」  戸惑う取り巻きに、梨花さんはさらに声を張り上げた。 「だから、そういうのダサいって言ってんの。わたしはもうやめるの」  ふてくされたように言い捨てた梨花さんは、チラとわたしを見た。  史子さんの催眠術の効果は一週間続くはず。  だから、わたしが助けたことも、わたしがかけた言葉もまだ思い出せないはず。  なのに、どうしてそんなことを言い出したのだろう。  だけど梨花さんは、目を丸くしているわたしからプイッと目を逸らした。
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