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「五年前?」
「……先輩たちが言うには、それまでは噂で終わっていた七不思議や都市伝説が、急に現れたって……」
それは、不思議研究同好会がまだ倶楽部だった去年、当時六年生の先輩から教えてもらったことだ。
その年から急に現れ始めたのは、児童に噂された七不思議や都市伝説だけじゃなかった。
高学年から学年に二、三人の割合で、能力を持った児童が現れ始めたのだという。
わたしは、零くんに同好会のことを言うかどうか一瞬迷った。
けど零くんは、この学校の不思議な力も分かっているし、私たちも彼を同好会に誘うつもりだったから、いいか。
わたしは涙を拭うと、零くんに向き直る。
「……『不思議研究同好会』。表向きは世界の不思議とかあやかしだとかを調べて楽しむ同好会なんだけど……」
「あぁ、転校初日に廊下に来ていたな。……予言者、催眠術師、口寄せ師、魔法少女……」
零くんは、みんなの能力をさらりと当ててしまう。
「……そこまでわかったの?」
また驚いて声を上げると、零くんは「まあ、ある程度」とつぶやいて続ける。
「彼らも普通の人間だけど、元から素質があったんだろうな」
零くんはそう言うと、「だからこそ」と私を見て続けた。
「お前がただの人間を自認していることが不思議でならないんだ。なぜこの魔女は、自分に『自分は人間である』と言う呪いをかけているのだろうと」
「……っ」
零くんの言葉にわたしは、思わず言葉を飲み込んでしまった。
それはわたしも思った。
水城先生に誘われて『不思議研究倶楽部』に入った児童は、全員が『異能者』。
なのになんで自分だけ、はっきりとした能力が出てこないのだろう。
道具を使わなくちゃ力は発揮されないし、しかも、おばあちゃんのタロットカード以外は反応しない。
だからわたしは、自分を『異能者』だとは認めてこなかった。
もし、零くんや、あの本の都市伝説が言うように、わたしが『星謳いの魔女』であるなら、もっともっとみんなの助けになるのかな。
そう思うと、わたしの心が踊った。
だけど。
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