6人が本棚に入れています
本棚に追加
「……使えた……」
さっきはなんの反応も示さなかったタロットカードが、わたしに答えてくれた。
わたしは、手にしている『隠者』のカードに「応えてくれてありがとう」とお礼を込めて胸に当てる。
だけどわたしには、もう一人お礼を言わなきゃいけない人がいる。
「あ、あの、……ありがとう……。零くんが来てくれなかったら、わたし……」
自分の力を否定したまま勝てる確証もなく、あの本の都市伝説に挑むところだった。
そしたら、同好会は消滅していたかもしれない。
零くんは、「いや……」と呟くなり、わたしから目を逸らす。
「噂に乗じて最初に都市伝説と接触したのは、俺だ。結果、二度もお前の髪を切っちゃったし……。こっちこそごめん。俺は、お礼を言ってもらえる資格はない」
零くんの言葉に、わたしは首を横にふる。
「さっきも話してくれたように零くんは、この学校の都市伝説やあやかしをなんとかするために、あのほんの都市伝説と会ったんでしょ? わたし、零くんが自分のことを打ち明けてくれたから……わたしも零くんを信用することができたんだよ」
ここまで告げて、わたしは初めて零くんに歩み寄った。
そりゃぁ、図書室で髪を切られた時はショックだったけど。
まだ言いたいことはあるけど。
この燃える気持ちが冷めないうちに、わたしにはやることがあった。
「零くん、わたしと一緒に図書室に行ってくれない? あの本の都市伝説を倒さなきゃ」
零くんは腰を下ろしていた机から降りるなり、ニッと笑った。
「その言葉を待ってた。行こう『星謳いの魔女』」
それは新たな二つ名。
『占い少女』も気に入っているけど、『星謳いの魔女』は自分ではない気がして少しくすぐったい。
だけどわたしは、この二つ名に恥じないようにしなければ。
わたしたちはお互い大きく頷きあうと、廊下へと駆け出した。
だけど。
この時、わたしはまだ、知らなかった。
図書室に、もうひとつ、わたしが向き合わなければならないものがあることを。
最初のコメントを投稿しよう!