誰が行く、わたしが行く。

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「……使えた……」  さっきはなんの反応も示さなかったタロットカードが、わたしに答えてくれた。  わたしは、手にしている『隠者』のカードに「応えてくれてありがとう」とお礼を込めて胸に当てる。  だけどわたしには、もう一人お礼を言わなきゃいけない人がいる。 「あ、あの、……ありがとう……。零くんが来てくれなかったら、わたし……」  自分の力を否定したまま勝てる確証もなく、あの本の都市伝説に挑むところだった。  そしたら、同好会は消滅していたかもしれない。  零くんは、「いや……」と呟くなり、わたしから目を逸らす。   「噂に乗じて最初に都市伝説と接触したのは、俺だ。結果、二度もお前の髪を切っちゃったし……。こっちこそごめん。俺は、お礼を言ってもらえる資格はない」  零くんの言葉に、わたしは首を横にふる。 「さっきも話してくれたように零くんは、この学校の都市伝説やあやかしをなんとかするために、あのほんの都市伝説と会ったんでしょ? わたし、零くんが自分のことを打ち明けてくれたから……わたしも零くんを信用することができたんだよ」  ここまで告げて、わたしは初めて零くんに歩み寄った。  そりゃぁ、図書室で髪を切られた時はショックだったけど。  まだ言いたいことはあるけど。  この燃える気持ちが冷めないうちに、わたしにはやることがあった。 「零くん、わたしと一緒に図書室に行ってくれない? あの本の都市伝説を倒さなきゃ」  零くんは腰を下ろしていた机から降りるなり、ニッと笑った。 「その言葉を待ってた。行こう『星謳いの魔女』」  それは新たな二つ名。  『占い少女』も気に入っているけど、『星謳いの魔女』は自分ではない気がして少しくすぐったい。  だけどわたしは、この二つ名に恥じないようにしなければ。  わたしたちはお互い大きく頷きあうと、廊下へと駆け出した。    だけど。  この時、わたしはまだ、知らなかった。  図書室に、もうひとつ、わたしが向き合わなければならないものがあることを。
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