本の都市伝説と、クラスメイトと、仲間と

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本の都市伝説と、クラスメイトと、仲間と

 図書室の入り口が見通せるところまで走ってきたわたしと零くんは、図書室の扉が見えるなり足を止めた。  なぜなら、図書室の扉の前は人でいっぱいだったからだ。   みんな、室内を心配そうに伺っていて、入り口には司書の先生が声を張り上げていた。 「危ないから逃げなさい!」  その声の後ろでは、バタンバタンと何かが争う音がする。  もしかして……。 「……もう動いたのか……」  零くんはそう呟くなり再び走り始める。  あの都市伝説が暴れているのか。  わたしも零くんの後を追った。  だけどこの人だかりをどうにかしないと、室内に入ることはできない。  今、わたしたちは力を持たない人たちに察知されないとしても、人並みを掻き分けない限り室内に入ることはできないからだ。  わたしはポケットバッグをポンと叩き、カードを手繰り寄せた。  そこに描かれていたのは、奇術道具を手にした若い男の人。   『魔術師』よ、みんなを眠らせて!  声に出したらみんなに聞こえてしまいそうだったので、心で念じてみる。  すると、魔術師が掲げたカップから光が溢れでた。  光はキラキラと降り注ぐと、みんなの体から力が抜け、その場に倒れ込んでしまった。  これで、図書室に入れる。  わたしと零くんは、床に倒れるみんなを踏んでしまわないように足元に注意しながら、図書室内に足を踏み入れた。  図書室の中に入ると奥の棚の方からガタガタと音と共に、声がする。  けど、わたしの目に飛び込んできたのは、棚と棚の隙間から見えた『人』の姿で。  考える前に、足が動いた。  わたしはその人に、見覚えがあった。  あのフワッとしたロングヘアは、五年二組の一軍女子のトップ・梨花さんだ。  放課後もわたしを嘲笑って昇降口の方へ向かっていったから、てっきり帰ったと思っていたのに。   すると、本棚の奥から低く嗄れた声が聞こえてきた。 『……興味本位であたしを開くとは、いい度胸だ小娘。あたしの養分にしてあげるよ……』  さっき梨花さんが見えた隙間から影色の手が伸びると、その先でドンと音と共に悲鳴が聞こえた。  多分、梨花さんが後退りをして棚にぶつかった音だ。  わたしは咄嗟にポケットバッグを叩く。  一瞬。  一瞬だけ迷った。  梨花さんはわたしを『呪いの日本人形』と呼んで、友達と笑い物にしたり無視したり、陰口や悪口を言った。  こんな人をわたしが助けてあげる義理なんか、ない。  だけど。    わたしはこの学校を守る『不思議研究同好会』の一員なんだから!  何か、武器になるもの。  なんでもいい。  剣でも、なんでも。  出てきて。  すると、わたしの手に現れたのは、星のカード。  カードはキラキラと光を帯びる星型のブーメランへと変わったので、わたした勢いよく投げ飛ばす。  すると星型のブーメランはまっすぐ飛んで、影の手を切り裂いてわたしの元へと帰ってきた。  わたしはその勢いのまま、本の都市伝説と梨花さんの間に滑り込む。
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