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決意を持って梨花さんの瞳を見つめると、梨花さんの瞳が戸惑いで揺れているのがわかった。
わたしの手を取っていいのか、迷っているように見えた。
けど、ふと目線をずらせば、スカートから覗く脚がガタガタと震えていた。
もしかして、腰が抜けて立てないのかな?
だけど敵は待ってくれない。
『隙がありまくりだよ、『星謡いの魔女』よ!!』
本の魔女の叫びにわたしは、息を呑んで振り返った。
影色の手が迫る。
手にしていた星のブーメランを構え直す。
けど。
突然吹き荒れた疾風が影の腕を切り裂いた。
この風は。
そう思う間もなく魔法使いのマントを翻して零くんが、わたしと本の都市伝説の間に割り込んだ。
「……俺を忘れてもらっちゃ、困るんだよ」
低い声で本の魔女に言ってやるその右腕には、ビュンビュンと風が渦を巻いで鳴いていた。
零くんは振り返ることなくわたしに言う。
「ここは俺が抑えるから、お前はそいつを」
「……ありがとう」
わたしは零くんの背にお礼を言うと、座り込んでいる梨花さんに手を差し出した。
梨花さんはわたしの手を取ろうとした一瞬、わたしの手を掴むのためらった。
けど、すごく悔しそうな表情を見せながらわたしの手を取る。
「……足が震えて、立てないのよ……」
「わかった」
わたしは梨花さんの手を掴んだまましゃがみ込んで、彼女の脇に肩をいれて立ち上がる。
けど、梨花さんはわたしよりも背が高いので、よろけてしまった。
こんな時は、タロットカードの力を借りるしかない。
わたしは空いている手でポケットバッグを叩く。
すると手に吸い付いたのは、綺麗なお姉さんが涼しい表情でライオンを手なづけている『力』のカード。
カードはわたしに怪力を与えてくれる。
「……しっかり掴まってて」
わたしは梨花さんを担ぎ上げると、勢いよく入り口に向かって走り出した。
図書室の入り口には、司書さんと入り口で溜まってた子たちがまだぐっすりと寝ていた。
けど、梨花さんはわたしから離れるなり、床に寝ている彼らには目もくれずに座り込んで、わっと泣き出してしまった。
よっぽど怖かったのだろう。
「だ、大丈夫? ……お、落ち着いて……」
わたしも梨花さんの隣に座って、その背中を撫でてやる。
けど梨花さんは、わたしが声をかけても泣き止まない。
このまま梨花さんを放っておくわけにはいかない。
かといって、零くんの方も心配だ。
それに、もし零くんのところへ戻って、その間に梨花さんが落ち着きを取り戻して帰ってしまったら、噂話を広められるかもしれない。
何か、いいカードはないかな。
この怖い記憶を書き換えられる、催眠術のような……。
と、その時。
図書室のすぐそばの階段を上がってきた人影が、わたしに声をかけた。
「あ、よかった愛美氏。いてくれたで候」
この、ちょっと抜けたような声に、この独特な口調は、もしかして。
わたしは思わず顔を上げる。
するとそこには、見知った四人の姿があった。
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