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「あたしは、愛美ちゃんを裏切らない。だって、愛美ちゃんは、一人で戦うあたしを精一杯サポートしてくれた。愛美ちゃんが覚醒して、やっとあたしが少し楽になるのに、愛美ちゃん潰してどうすんの? 馬鹿なの?」
「……みももちゃん……」
気だるそうな半目に似合わず、彼女の表情は本当に魔法少女のヒロインのよう。
思いがけない言葉が嬉しくて、思わず彼女の名を呼ぶと、後ろから足音が響いてくる。
「あら、みももちゃんだけが愛美ちゃんを好きなわけじゃないわ」
この声。
振り返ると後ろには、廊下で待機していた史子さん。
部長と、英輔くんもいる。
「わたしも愛美ちゃんのこと、好きよ? だって、愛美ちゃん、こんな自由奔放な私たちをまとめてくれるんですもの」
都市伝説を目の前に、いつもの柔らかな微笑みを湛えている史子さんの隣、英輔くんも大きな瞳を潤ませながらぎゅっと拳を握りしめている。
「僕も、愛美さんのこと大好きです。愛美さんは、僕や幽霊にも優しくしてくれます。この学校で愛美さんのことを悪く言うモノもありませんっ」
「某も、愛美氏には絶対的な信頼を抱いているで候。やっぱり某の予言は百発百中!」
そう自画自賛する部長は、自信に満ちた笑みを浮かべている。
あの日、わたしが初めて『不思議研究倶楽部』に助けてもらった日。
剣士の琴さんとサイキッカーの友梨さん、霊媒師の和慧さんと陰陽師の清明さん、そして催眠術師の史子さんと共にわたしを助けてくれた部長は、泣きじゃくってぐしゃぐしゃなわたしを見て、予言をしたのだ。
その少女、我が倶楽部に更なる力をもたらす新風なり。やがて大きな神風を巻き起こすであろう。
部長は二年前の予言なんて、もう忘れちゃったのかと思っていたのに。
わたしはみんなの言葉や思いが嬉しくて、溢れてくる涙を抑えられなかった。
だから、ありがとうの代わりに、本の都市伝説から浮かび上がる女の人をキッと睨んだ。
「……わたしも、みんなが大切。みんなが大好き。わたしも、みんなを裏切らない!」
デスサイズの鎌を本の都市伝説に向けると、彼女はハハハと乾いた笑いを響かせた。
『その言葉、わたしを裏切ったルネに聞かせてあげたい――っ!?』
本の都市伝説から浮かび上がる女性が言葉を最後まで言い終わらないうちに、どこからか吹いた突風が彼女の体を縛り付けた。
零くんの魔法だ。
ぐっとうめいた本の都市伝説から浮かんだ女の人を、零くんは心底うんざりと言う表情で睨みつけた。
「小学生相手にぐちぐちと……。あんたの御託は聞き飽きたんだよ……」
低く抑えるような声は、もうこのこう着状態に飽き飽きしていると言う意思表示。
『……なんだい、そんな言葉でアタシの恨み辛みをチャラにしようってのかい? こんな風、すぐに吹き飛ばせんだよ!』
身体中に力を込めて、ふんと零くんの突風を弾き飛ばした本の都市伝説の女性。
だけどわたしたちは、この一瞬の隙を狙っていた。
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